有望
Memory Layers at Scale(Meta)
最大80億パラメータのベースモデルに、最大1,280億のメモリパラメータを加え、1兆トークンで学習しました。メモリを持つモデルは、2倍以上の計算量を使う密なモデルを上回り、計算量とパラメータ数が同じ「専門家混合(MoE)」モデルも上回りました。効果がとくに大きいのは、事実を問う質問です。
深掘り · 第III章
従来のモデルでは、どの単語もネットワークのすべての「引き出し」を通ります。関係のない引き出しもすべてです。では、巨大なカードの棚を加えて、モデルが必要な2〜3枚だけを開くようにしたらどうでしょうか。
言語モデルは、知識の多くをフィードフォワード層と呼ばれる部分に蓄えています。これは記憶のように働きますが、密な記憶です。どの単語もその全体を通るため、毎回計算がかかります。
メモリ層は、これをキー → 値の組からなる巨大な表で置き換えたり、補ったりします。モデルは単語ごとに、ほんの数個の値しか読みません。こうして、計算を増やさずに何十億ものパラメータを加えられます。誰も読む本を増やさないまま、蔵書だけが増えていく図書館のようなものです。
問題は、100万のキーの中から最良のものを探すには、ふつう100万回の比較が要ることです。プロダクトキー(Lampleら、2019年)の工夫はこうです。問い合わせを前半と後半に分け、それぞれを1,000個の「半分のキー」のリストと比べ、上位同士を掛け合わせます。すると、1,000 × 1,000 = 100万マスの中から、わずか2,000回の比較で正しい結果が得られます。
モデルはそのあと数個(たとえば30個ほど)の値を読み、重みつきの平均をとります。どれだけを先の計算に流すかは「ゲート」が決めます。
出典: Lample et al., Large Memory Layers with Product Keys (NeurIPS 2019)
図D — 全部開けずに正しいカードを見つける
ここでは、8+8回の比較で64マスの中から最良のマスが見つかります。1,000+1,000回の比較なら、100万マスの中から選べます。
説明用の図です。考え方を示すもので、測定値ではありません。
有望
最大80億パラメータのベースモデルに、最大1,280億のメモリパラメータを加え、1兆トークンで学習しました。メモリを持つモデルは、2倍以上の計算量を使う密なモデルを上回り、計算量とパラメータ数が同じ「専門家混合(MoE)」モデルも上回りました。効果がとくに大きいのは、事実を問う質問です。
有望
文章中の短い単語の並びをもとに、一定の時間で引ける記憶です。大きさと計算量をそろえた比較で、270億パラメータのモデルはMMLUで3ポイント、推論(BBH)で5ポイント向上し、長文の中から情報を探すテストでは84.2%から97%に伸びました。1,000億パラメータの表は、数が少なく高価なGPUのメモリではなく、コンピュータの通常のメモリに置けて、処理速度の低下は3%未満です。これを切ると事実の知識は崩れます(TriviaQAは元の29%に低下)。事実はたしかにそこにしまわれているのです。
出典: DeepSeek, Engram: Conditional Memory via Scalable Lookup (2026)
有望
一つの事実が使うマスはわずかなので、そのマスだけを更新できます。新しい事実を学ばせると、全体を学習し直した従来のモデルは別の質問での性能を89%失い、LoRAという手法でも71%失いました。メモリのマスを狙って更新した場合は、同じだけ学んでも11%の低下で済みました。
出典: Lin et al., Continual Learning via Sparse Memory Finetuning (Meta, 2025)
記憶には2つの系統が見えてきました。一度学習したら変わらない固定の表(Memory Layers、UltraMem、Engram)と、Titansのように読みながら書き込まれる記憶です。
Titansは自分が驚いたことを記憶します。これはまさに、例外こそ覚える価値があるとする私たちの仮説H4の考え方です。予想外のことだけを記憶する機械は、「規則+例外」という形の圧縮を行っていることになります。
有望
専門家混合(MoE)モデルは計算を節約できますが、実際に使うときには多くのパラメータをメモリから読み出す必要があり、そのぶん遅くなります。UltraMem(ByteDance、2,000万個のメモリのマス)は、同じ大きさ・同じ計算量のMoEより最大6倍速く、利用コストを最大83%削減し、密なモデルとほぼ同じ速さで動きます。マスを増やしても、速度はほとんど落ちません。
出典: Huang et al., Ultra-Sparse Memory Network (ByteDance, ICLR 2025)
有望
Googleのモデルでは、長期記憶が小さなネットワークになっていて、読みながら自分の重みを書き換えます。驚いたこと(誤差の大きさで測ります)を書き込み、それ以外は少しずつ忘れていきます。短期記憶の役は従来のアテンションが担います。その結果、200万トークンを超える文脈を扱え、干し草の山から針を探すテストでは、より大きなモデルよりも良い成績を出しました。
出典: Behrouz et al., Titans: Learning to Memorize at Test Time (Google, 2025)
これは、モデルの内部で知識と推論を分けられることを示す、現時点で最も直接的な証拠です。Engramでは、記憶を切ると事実の知識は崩れますが、ほかの能力までは崩れません。しかも記憶があることで、ネットワークの最初の層が推論に使えるようになります。
さらにコストを抑える道でもあります。記憶は安価な通常のメモリに置けますし、更新するときもモデル全体を学習し直す必要はなく、いくつかのマスを書き換えるだけで済みます。
巨大な表を読むのは計算こそ軽いものの、メモリの帯域を大きく使います。効率よく動かすには専用の実装が必要でした。公開された実験は、Metaで80億パラメータのベースモデルまで、DeepSeekで270億パラメータまでです。そしてこの記憶は内部にあって中身が見えません。外部のデータベースと違い、そこから出典を読み取ったり引用したりすることはまだできません。
H2(「上の層は学び、下の層は参照する」)を強く支持する結果で、確信度を70%から75%に引き上げます。Engramでは、パラメータのおよそ4分の1を記憶に、4分の3を計算に回すのが最適でした。未解決の問い3が尋ねている境界について、初めて得られた具体的な数字です。
メモリ層を持つミニモデルに事実のリストを覚えさせ、そのうち1つだけを訂正します。触るのは、その事実のマスだけです。訂正が定着し、ほかの何も忘れていないかを確かめ、同じ話題のマスが自然に寄り集まるかを見ます。もしそうなれば、階層がひとりでに現れたことになります。